1989年に我々は、初めて1-ヒドロキシインドール化合物をこの世に誕生させることに成功し、1996年初め、そのうちのいくつかの化合物が、市販の薬であるCilostazoleよりも10倍も強力な血小板凝集阻止作用を示すことを見出した。こうして循環器系疾患治療薬開発のための、我々独自のリード化合物を手中に出来たので、さらに各種誘導体の合成を試み、現在様々な1-ヒドロキシトリプタミン化合物群を創りだすことに成功しつつある。 また、1-エトキシ-2-フェニルインドールを光照射すると、1位のエトキシ置換基が3位および6位に転位するという興味ある事実を見出した。が、この6位転位体の構造を決定することは難儀であった。何故ならば、インドール化学において4位および6位置換体を選択的に合成することが難しいためである。 しかしながら、1-ヒドロキシインドール化合物群に特徴的な新反応を見出すことにより、4位、5位、6位、および7位にエトキシ置換基を持つ標品をそれぞれ選択的に合成する独自の方法を開拓することに成功して、直接サンプルを同定して構造決定できた。 さらに、全く未知であった1-ヒドロキシインドール化合物群の化学反応性について、様々な基礎知見を蓄積中である。特記すべき興味ある知見は、4-および5-ニトロ-1-ヒドロキシインドールが、アミドカップリング機能を持ち、その能力が同じ目的のために現在汎用されている、1-ヒドロキシベンゾトリアゾールと同等であることである。研究目的達成のための原料として、各種の構造を持つ、Nb-置換トリプタミンが必要であるが、その合成に役立つ我々独自の試薬開発につながることが期待されるため、現在精力的に研究を進めている。
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