海洋生物由来の生物活性物質探索研究の過程で、長崎県五島列島で採取した海綿Callyspongia truncataから、培養腫瘍細胞に対して著しく強い細胞毒性(KB cellに対するIC50=10pg/ml)を示す新規ポリケタイドcallystatin A(1)を単離し、機器分析および合成化学的手法によりその全化学構造を決定している。しかしながら、1は微量成分(新鮮海綿1Kgから収量1mg)であることよりin vinoでの作用および作用機序の解明と我々の提出した絶対立体構造の確認を目的として全合成研究に着手した。 そして、アリリックトリブチルホスホラスイリドを用いるE-選択的Wiitig反応とEvansの不斉アルドール反応を鍵反応として利用し、1の始めての全合成に成功するとともに、我々の提出した絶対立体構造が正しいことを確認した。 また、1の大量合成にも着手し、その過程でより実用的な合成法を確立するとともに、in vivoでの活性を検討し、1はin vivoにおいても優れた抗腫瘍作用を有することを見出した。さらに、callystatinA(1)の構造活性相関を明らかにする目的で数種のアナログの合成を行い、5位の立体配置、8位エチル基および10位のメチル基が活性発現に大きく寄与していることを明らかにした。また、1の活性発現に直接関与するファーマコフォーは不飽和ラクトン部分であり、この部分が受容体との結合部位であることを見出すとともに、16位以降のβ-ハイドロキシケトン部分はその受容体との結合形成をより強固していることを合成化学的に明らかにした。
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