研究概要 |
緑茶ポリフェノールの主成分であるエピガロカテキンガレート(EGCG)は,TPA等の発癌プロモーター活性を強く抑制することが知られており,既に各種動物組織癌に対する化学発癌二段階試験におけるin vivo系での効果が立証されている.生体内でのこれらの効果は,EGCGが活性本体と考えられるが,その詳細は未解明であり,化学発癌の予防,作用部位,作用機構についてEGCGの生体内挙動を把握することは極めて重要と考えられる.そこで,EGCGの生体内挙動の研究を目的として,主にラットにおけるEGCGの代謝物の検索を行った. EGCGをラットに強制経口投与後,尿,糞および胆汁中の代謝物の検索を行った.尿中については未変化体並びにその代謝物は検出できず,糞中には未吸収と思われるEGCGを多量検出した.また,胆汁中のHPLC分析から代謝物と思われるピークが数本認められたので,以後胆汁を中心に代謝物の精査を行った.その結果,EGCGをラットに経口投与した後,採集した胆汁を各種クロマトグラフィーにより分離,精製を行い,未変化体および代謝物1種を単離した.代謝物の構造はNMR及びMS等スペクトル分析の結果,EGCGのジメチル体と決定した. 以上の結果,経口投与後,胆汁中にEGCGおよびそのジメチル体が排泄されたことは,EGCGが消化管で吸収されたことを意味し,初回通過効果を考慮に入れてもEGCG又はその代謝物が循環血に入っている可能性があり,EGCGの多様な生理活性本体はEGCGそのものによる可能性が少なからず示唆された.今後,吸収される以前,すなわち消化管内におけるEGCGの変化,例えば,腸内細菌による代謝等の検討を行う予定である.
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