近年、植物、動物を問わず細胞の認識に係わる現象に様々な形で細胞表層の糖鎖が関与することが示唆されている。 我々は、下等動物の複合糖脂質の系統的研究を行っており、前年度、扁形動物及び環形動物より見出されたGalβ(1→6)Galをコアとするneogala系列の中でフコース及びマンノース含有新規糖脂質のアナログ体の合成を完了した。今年度は引き続きneogara系列中、グルコース及びホスホコリン含有4種の新規糖脂質アナログ体の系統合成を行った。ホスホコリンがガラクトース残基の6位水酸基に結合している化合物が報告されたのは、本化合物が初めてであり、PAF活性やモノカイン誘導活性等の生物活性が報告されており、創薬の観点から興味深い。これらの合成については現在投稿準備中である。一方、寄生虫の一種で、扁形動物に属するマンソン裂頭条虫より新規な糖脂質が報告され、この化合物についても合成を行った。本化合物はどの系列にも属さない五糖からなる糖脂質であり、host-parasite interactionの観点から興味が持たれる。今後、さらにより複雑な糖鎖にホスフォコリン基が結合した両性イオン型糖脂質の合成を行いその生理活性について検討する。neogala系列終了後、さらに節足動物由来のarthro系列、腔腸動物由来のschisto系列など一連の糖脂質についても検討する。
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