研究概要 |
これまで塩化パラジウムを用いて種々の糖類から合成された5,6-不飽和糖や、6位に置換基を有する5,6-不飽和糖についてFerrier反応を行い、本反応の光学活性シクロヘキサン環の合成法としての高い汎用性を示してきた。また、これらの知見に基づき、本反応を天然物合成に応用し、HIV阻害活性を示すことで最近注目を集めているサイクロフェリトールの効率の良い合成法を開発することができた。 平成10年度はさらに、サイクロフェリトールのエピマー合成を試みた。これまでのグルコースだけでなく、マンノースについても同様にFerrier反応を行い、得られたシクロヘキサン環への位置選択的なヒドロキシメチル基の導入を検討した。すなわち、サイクロフェリトールの全合成と同様に、いったん、シクロヘキサン環上に立体選択的にエポキシ環を形成した後、ヒドロキシメチル基等価体による位置選択的なエポキシ開環反応を試みた。その際、適当な保護基を導入することによって、ヒドロキシメチル化の位置選択性を自在に制御できることを初めて見いだした。恐らく、保護基の立体的な影響を受け、シクロヘキサン環のコンフォメーションが変化することによって、このような位置選択性の変化がもたらされるものと考えている。これによってヒドロキシメチル基の所望する位置への立体選択的な導入法を確立したので、さらにサイクロフェリトールのエピマー合成に応用し、エピサイクロフェリトールの効率の良い合成に成功した。 上述のサイクロフェリトールならびにそのエピ体については今後、生物活性を測定し、構造活性相関研究へと発展させる予定である。
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