平成11年度は計画書に基づいて次の2項目について研究を行なった。 (1)ラット好塩基球株(RBL細胞)の形質膜Caチャネル欠損ミュータント株の解析 (1)Ca濃度変化バターンの野生株との比較 形質膜のCaチャネルブロッカーであるランタンイオンとSK&F96365のCa濃度変化パターンに及ぼす影響を調べた。その結果、ミュータントで見られる一過性のCa濃度上昇は、形質膜Caチャネルの阻害によるパターンとほぼ同じであることが明らかとなった。 (2)膜蛋白質の電気泳動パターンの野生株との比較 形質膜を単離し、その電気泳動像をミュータントと野生株で比較したが、両者に特に差は認められなかった。このことから、昨年の研究によって得られたCaチャネル欠損ミュータントは、Caチャネルが存在しないのではなく、アミノ酸配列のわずかな変異にり機能が低下しているものと考えられる。 (2)ラット好塩基球株(RBL細胞)におけるTRPチャネルの発現と機能 上記(1)の研究によって、ミュータントからCaチャネルを同定することが困難となったので、TRPとよばれる肥満細胞のCaチャネルとと似た特徴をもつTRP(transient receptor potential)のホモログRBL細胞に発現しているかどうかを調べた。 (1)RT-PCRを行なうことによって、RBL細胞にTRPのホモログのうち、TRP1、2、6の3種類が発現していることが明らかとなった。 (2)最も発現量が多いと思われるTRP1をRBL細胞に過剰発現させ、その細胞のCa動態及び脱顆粒反応を調べた。その結果、抗原刺激によって引き起こされる細胞内Ca濃度上昇において、特にその持続相の延長が認められた。また、エクソサイトーシスによって細胞外に放出されるβ-ヘキソサミニダーゼの定量により、脱顆粒も増強されることが明らかとなった。
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