ヒトαガラクトシダーゼを発現する酒精酵母をファメンターで培養してヒトαガラクトシダーゼを大量に発現させ、ブルーカラムとConAカラムを用いて粗精製試料を得た。ヒトαガラクトシダーゼのアスパラギン結含型糖鎖をエンドグリコシダーゼHfにより短鎖化し、HPLCによる精製を進めて結晶化用試料を得た。ポリエチレングリコールを結晶化の沈殿剤として用いたところ、ヒトαガラクトシダーゼの斜方晶系結晶が析出した。斜方晶系結晶を種々の重原子試薬溶液に浸潤して重原子誘導体結晶の作成条件を検索し、白金または水銀が結合した良好な重原子誘導体結晶を得た。斜方晶系結晶と白金及び水銀誘導体結晶のX線回折強度データから重原子同型置換法により位相を決定し、分解能3.0Åの斜方晶系結晶の電子密度を計算した。得られた電子密度を基にして分子モデルを構築し、結晶学的構造精密化を進めたところ分解能2.5ÅでR因子は0.22に収束した。ヒトαガラクトシダーセのモノマーは約300アミノ酸残基からなるα/βバレル構造からなるドメインと約100アミノ酸残基からなる小さなドメインの二つからなる構造を形成しており、非対称単位にはモノマーが二個含まれている。二つのモノマー構造には分子表面を除いて大きな偏差は見られない。浸潤法により結晶内のヒトαガラクトシダーゼに結合させた基質類以阻害剤はα/βバレル構造のC末端側に存在する分子表面の窪みに結合した。したがって、ヒトαガラクドシダーゼの活性部位は他のα/βバレル構造を持つ酵素と同様にβバレル構造のC末端側に存在すると考えられる。
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