メカノケミカル固相重合法の反応装置に依存しない一般性ある重合反応性および生成高分子特性(分子量)の指標を確立するため、粉砕エネルギーとこれらの特性との関係について検討した。まず、仕事関数が既知のガラスビーズを用いて粉砕機の粉砕エネルギーをBondの式により算出した。その結果、粉砕エネルギーは粉砕周渡数の3乗に比例し、Roseらの結果とも一致した。かかる知見を基に、モデル高分子としてポリメタクリル酸メチル(PMMA)のメカノケミカル反応を実施した。PMMAのメカノケミカル反応においては、メカノラジカル生成と同時にその失活も進行しており、速度論的解析よりESRスペクトルにおいて観測されるラジカルよりも多量のラジカルが本反応過程において生成していることを明らかにした。また、メカノラジカル生成と分子量減少とは反比例の関係にあることも示された。さらに、種々の粉砕エネルギーにおける医薬品モノマーのメカノケミカル反応を実施した。いずれの粉砕エネルギーにおいても生成高分子は単分散性に近い分子量分布を有し、かつ粉砕エネルギーによる分子量制御が可能であることが明らかになった。また、粉砕エネルギーより重合の進行率を予測することも可能であり、粉砕エネルギーを指標とすることにより一般性ある重合反応性および生成高分子特性(分子量)の予測が可能であることを明らかにした。 一方、本重合法により得られる高分子プロドラッグからの薬物放出速度制御のため、高分子側鎖に種々の官能基を導入し、その薬物放出速度への影響についても検討した。その結果、側鎖官能基の親水性に加え、塩基性側鎖においてはそのpK_bも重要な因子であることが示唆された。したがって、ハイブリッド型高分子プロドラッグ構築においては薬物の組み合わせによる薬物放出促進あるいは抑制への注意が必要であることが示唆された。
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