研究概要 |
消化管粘膜は医薬品の吸収部位の一つであるとともに異物の体内移行を防御する境界線でもある。つまりここでの防御機構の破綻は異物の体内侵入を許すことになり結果的に生体恒常性の乱れが予想される。例えば消化管管腔側からバクテリアのトランスロケーションを介して産生されるlypopolysaccharide(LPS)は免疲系に影響を与え、これが多臓器不全や肺血症を誘導し時として死に至るケースも少なくない。異物の解毒排泄は主として肝臓で行われるため、消化管粘膜を介した解毒排泄に関する報告は少ない。LPSは腹腔マクロファージとの相互作用が知られているが、申請者はLPSの体内動態制御を基盤とした解毒排泄システムの構築を念頭に置き、昨年度はLPSのpolysaccharide構造に着目し、モデル物質(dextran polysaccharideのFITCラベル体)の消化管粘膜を介する排泄様式についてCaco-2単層膜を用いて検討した。その結果、dextran polysaccharideは基底膜上ではpolysaccharideとして認識されその後のendocytosisを介して頂側膜側に排泄されることを示し、従来の常識を覆した(BioL Pharm.Bull.,22:330-331(1999))。本年度はさらに(1)基底膜を介するdextran polysaccharideのendocytosisは硫酸基を持つもの(sulfated polysaccharide)では見られないことを示し、硫酸基の有無が基底膜上での上でのpolysaccharideの基質認識およびendocytosisに於いて重要であることを明らかにした。これに対して(2)dextran polysaccharideの細胞内から頂側膜側への輸送に関してはexocytosisの関与を示唆出来る結果を得ている。(3)protein kinase C(PKC)の活性化はdextran polysaccharideの排泄を促進した。(4)nitric oxide(NO)は逆にdextran polysaccharideの排泄を抑制した。以上の結果から(5)dextran polysaccharideの消化管粘膜を介する排泄にはPKCの活性化が考えられNOレベルとの関連性も推察出来た。
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