遺伝子データベースから、推定アミノ酸配列より7回膜貫通型受容体と推測され、リガンドが未知であるcDNAを検索した。そのうち、リガンドがペプチドでG蛋白質Gi/oと共役すると予想されるものを数種類選んだ。PCR及びノザンハイブリダイゼーションを行い、各組織での発現を調べた。その結果、感覚器官に特異的に発現していると考えられているオーファン受容体SENRが、ラット膀胱・心臓・肺・脳・肝臓・腎臓・十二指腸、ウシ心臓・膀胱、ヒト心臓にも発現していることが解った。次に、選んだ受容体が発現しているラット組織より、cDNAライブラリーを作製しプラークハイブリダイゼーション、又はPCRを行い、cDNAをクローニングした。 これらの受容体は脳で発現していたので、ウシ脳よりリガンドの精製を試みた。受容体cDNAを培養細胞(CHO細胞)に導入・発現させ、ウシ脳粗抽出物を各種カラムで分画して添加し、cAMP濃度の測定を行った。 その結果、分子量約1万kDaの画分に、オーファン受容体GPRDを発現させた細胞のcAMP濃度を減少させる活性を見いだした。現在、この活性を精製中である。 ところで、オーファン受容体がCHO細胞の内在性G蛋白質と共役しない場合、上述の方法では活性を見られない。そこで、受容体とG蛋白質との融合蛋白質cDNAを、PCR法により作製し、培養細胞に導入・発現させた。今後、この系を用いてリガンドの精製を行う予定である。 リガンドが、一過性に発現する場合や極微量の場合などは、組織より精製を行うのは難しい。そこで、確実にリガンドを得るために、ファージディスプレイペプチドライブラリを用いることにした。すなわち、バキュロウイルス蛋白発現系を用いて、Sf9細胞に上述の融合蛋白質を発現させ、膜画分を調製した。これのG蛋白質の活性を指標として、ペプチドライブラリよりリガンドのスクリーニングを行っている。
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