動脈硬化巣にみられる泡沫細胞は、初期病変では主にマクロファージがコレステロールを蓄積し泡沫化したものであるが、病巣が進行すると血管平滑筋細胞が増殖し過剰の脂質を蓄積し泡沫化したものである。病変部の発症段階や進行する過程で、マクロファージが血管平滑筋細胞にどのように影響するかを明きからにするために、マクロファージと血管平滑筋細胞の共培養を試みた。血管に存在する平滑筋細胞は増殖せず、収縮を主な機能としている。そこで、増殖能を有する培養平滑筋細胞の増殖を抑制するために、コラーゲンでできたチューブ内で細胞の培養を行った。平滑筋細胞は増殖を停止すると同時に、マトリックスを分解するMMP(Matrix metalloprotease)の分泌をも抑制したが、コラーゲンの分泌が増加した。また更に、成熟した細胞のマーカーであるカルデスモン重鎖が発現するようになり、分化型の性質を示すようになった。この状態の平滑筋細胞にマクロファージを添加し共存培養した。マクロファージはコラーゲンチューブ中を遊走し、平滑筋細胞がコラーゲンチューブに対して接着している部位に集積していた。このマクロファージはMMP2とMMP9を積極的に分泌していた。これらの結果から、マクロファージはコラーゲンマトリクスと平滑筋細胞の接着部位に集積し、MMPを分泌することで平滑筋細胞接着部位のコラーゲンを分解することがしめされた。また、これが刺激となり、平滑筋細胞は形質変換をおこし遊走し増殖するようになると考えられる。
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