α-トコフェロール輸送蛋白質(αTTP)は肝臓のサイトゾルに多く存在する蛋白質であり、ビタミンE欠乏性運動失調症の原因遺伝子である。我々は本年度αTTPノックアウトマウスの作製に成功した。αTTPノックアウトマウスは通常の食餌を与えていても血中ビタミンE値が検出できないレベルにまで低下しており、またへテロ欠損体におけるαTTPの発現量は正常個体のちょうど半分であり、血中ビタミンE値もこれに応じて半分に低下していることから、αTTPが体内ビタミンEレベルの調節因子であることが実験的に証明された。一方肝細胞内におけるαTTPの機能を分子レベルで理解するための一つの手がかりとして、αTTPと相互作用する細胞内蛋白質の検索を行った。具体的にはリコンビナントαTTPをリガンドとしたアフィニティーカラムを作製し、結合する蛋白質の精製を試みたところ、分子量約50KDaの膜結合蛋白質(p50)がαTTPと結合することを見出した。CDNAクローニングを行った結果、p50は新規蛋白質であり、一次構造上シナプス小胞に局在する蛋白質とホモロジーが高いことが判明した。これまでに、αTTP依存的に細胞内に取り込まれたα-トコフェロールが細飽外へ放出されるという現象を見いだしてきたが、あるいは今回同定したp50は細胞内でαTTPがα-トコフェロールを受け渡す受容体分子である可能性も考えられる。また、p50が結合している膜ドメインはシナプス小胞様の細胞内輸送小胞である可能性も考えられる。
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