学習障害モデル動物として確立しつつある両側総頚動脈永久結紮(2VO)ラットの結紮にともなって脳内で生ずる分子的変化を遺伝学的手法を用いて検討した。今年度は、学習障害の原因因子の検索を目的として、結紮初期(4日後)に発現変化する因子についてDifferential Display法(DD法)により検討を行ない、11個の因子を単離、その配列を決定した。また、DD法による単離に際して、その後の操作を行いやすくするための独自の改良を加えた。得られた11種の因子のsense鎖をRT/PCRに基づく独自の手法により決定した後、すべてについて定量的PCR法によりその発現量変化を、2VO処置郡と対照郡との間で詳細に検討した。その結果、vof-21と名付けた因子の発現量が2VO処置によって著しく増大することを見出した。DD法により単離したvof-21は415塩基であったが、DD法により明らかになる配列は通常部分配列であるため、その全長のクローニングを行なう目的で、5'-race、3'-race法を行なった。その結果、DD法の際のprimerとしてoligo(dT)構造をもつものを用いたため、3'側ではこれ以上の配列は得られなかったが、5'側の266塩基の新たな配列が明らかとなった。明らかにした計681塩基によってコードされる蛋白の配列はコンピューター解析の結果からも、データーべ一ス検索の結果からも得られなかったことから、vof-21は5'側にさらに配列を有する新規の因子と考えられた。一方、昨年明らかにしたvof-16(DD法により789塩基を解明)の全長についての検討も行なったが、こちらは両race法により配列が得られなかった。このことなどよりvof-16の全長はかなり長いものと考え、現在ファージライブラリーにより全長の解析を進めている。今後、vof-16及びvof-21の全長の解析、ノーザンブロット解析を進めるとともに、その機能についてliposomeによるアンチセンス導入法を用いて検討する予定である。
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