研究概要 |
P-セレクチン/P-selectin glycoprotein ligand-1(PSGL-1)相互作用は,炎症反応の初期に重要な役割をはたす。P-セレクチンは活性化血管内皮細胞および活性化血小板に発現し、炎症反応の最も初期の反応である白血球と活性化内皮細胞の接着に関わっている分子である。このP-セレクチンの特異的なリガンドとして、白血球上に発現するムチン様糖タンパク質PSGL-1が知られている。最近の報告によると、PSGL-1のN末端近傍がsLe^x様糖鎖修飾およびチロシン残基の硫酸化修飾を受けており、この2つの修飾が同時に存在することで、P-セレクチンとの結合に高い親和性をもたらしていると考えられている。われわれは、抗ラットP-セレクチンモノクロ一ナル抗体を作製し、PSGL-1との結合に関与するP-セレクチン上の機能的部位の解析を試みた。その結果、P-セレクチンとPSGL-1と6結合は阻害するがsLe^xとの結合は阻害しないユニークなモノクローナル抗体C215を樹立することができ、この抗体がP-セレクチン上の8アミノ酸よりなるエピトープ、すなわちWADNEPNNを認識することを明らかにした。さらに、この8アミノ酸よりなる合成ペプチドがP-セレクチンとPSGL-1の結合を特異的に阻害すること、およびsLe^x糖鎖非依存的にPSGL-1遺伝子導入細胞と結合することを明らかにした。これまで、sLe^x糖鎖結合ドメインのみがP-セレクチン上の機能ドメインと考えられてきた。しかし、以上の結果により、P-セレクチン上のアミノ酸76から83番のWADNEPがPSGL-1の認識に関与する新規機能エピトープである可能性が示唆された。
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