研究概要 |
現在、主に培養細胞系あるいはラットを用い、腎有機アニオン輸送及びP-糖蛋白質介在性輸送の活性調節について解析を進めている。今年度の研究によって得られた知見及び今後の展開は以下のとおりである。 腎有機アニオン輸送の活性調節研究:培養腎上皮細胞OKを用いて、有機アニオンp-aminohippurate(PAH)輸送に及ぼすアデノシンA_1レセプターアンタゴニストKW-3902の影響について検討した。その結果、OK細胞におけるPAHの経細胞輸送及び側底膜輸送のいずれもがKW-3902処理濃度依存的に阻害されることを見出した。また、別のアデノシンA_1レセプターアンタゴニストである8-cyclopenlyl-1,3-dipropylxanthine(DPCPX)も、側底膜PAH輸送を阻害することを認めている。さらに、adenosine deanminase処理によっても側底膜PAH輸送は低下することから、腎尿細管においてオータコイドとして作用しているアデノシンが腎有機アニオン輸送の活性調節に関与している可能性が考えられる。 P-糖蛋白質介在性輸送の活性調節研究:この研究は、ラットを用いた全身レベルでの解析を進めている。チトクロームP4503A(CYP3A)を誘導するグルココルチコイドであるデキサメタゾン(DEX)をラットに投与後3ないし4日目に、P-糖蛋白質基質ローダミン123(Rh0123)の体内動態について解析したところ、対照群に比べ著しくRho123の全身クリアランス、腎クリアランス、消化管分泌クリアランス等が上昇していることが観察された。これらクリアランス上昇はDEXによってP-糖蛋白質が誘導された結果である可能性が考えられることから、Western blottingなどによる解析も開始している。
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