本研究は、3糖以上の長糖鎖の硫酸化修飾を触媒する新規の硫酸基転移酵素の検索と精製法の確立、およびその性状解析を目的としている。本年度は、私の開発したスルファチド(SM4)合成に関るラット腎由来硫酸基転移酵素(GalCer sulfotransferase:CST)の測定系や精製法[Purification and chracterization of GalCer sulfotransferase from rat Kidney.投稿中、第71回日本生化学会大会発表]を応用し、SM2、或いはSM1など3糖以上の糖鎖を有する糖脂質糖鎖に硫酸基転移を触媒する酵素群の有無をラット腎臓抽出溶液を用いて検索した。その結果、ラット腎臓中には先のスルファチド合成に関与するスルホトランスフェラーゼ(CST)とは明らかに性状と分子量の異なる新規硫酸基転移酵素が存在する可能性が示された[Characterizaition of Gg_3Cer sulfotransferase from rat Kidney.投稿準備中、第72回日本生化学会大会発表予定]。ラット腎臓にはSM2bなど末端GalN Acが硫酸化された糖脂質が他の種に比べ豊富に存在することが知られており、この酵素はGg_3Cerの糖鎖末端GalN Ac(アセチルガラクトサミン)3位を硫酸化し、Gg_3CerからSM2bの生合成に関与する酵素と考えられる。以前の報告で末端Gal(ガラクトース)3位の硫酸基転移酵素CSTはGg_3Cerの末端GalN Ac3位も硫酸化できること、すなわちCSTはGg_3CerからSM2bの合成可能であることが示されているが、私は本酵素がCSTとは明らかに異なる新規酵素であることを確認しつつある。本研究成果はCSTのみが糖脂質の硫酸基転移に関与する唯一の酵素であるか否かという議論に新しい答えと展開を与えるものと確信している。なお、硫酸化シアリルルイスXやSM1、SM2を有意に発現しているがん細胞株の検索をおこなっているが極めて発現の高い細胞株は本年度確認できなかった。硫酸化シアルルイスXの硫酸化修飾を触媒する硫酸基転移酵素は最近遺伝子が単離されており、上記のラット腎臓中の新規酵素の精製と性状解析等を現在早急に進めている。
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