研究概要 |
本研究では、1)リンパ球に発現するムスカリン(mAChR)およびニコチン(nAChR)様アセチルコリン受容体,2)mAChR刺激による細胞内カルシウムシグナリング機構について検討した.実験材料として種々のヒト末梢血由来白血病細胞株およびヒト末梢血より調製した単核白血球を用いた. 1) 血球細胞上に発現するAChRの解析:各細胞株あるいは単核白血球におけるmAChRサブタイプおよびnAChRサブユニット遺伝子の発現をreverse transcription-plolymerase chain reaction(RT-PCR)法により解析した.調べたすべてのTおよびB細胞系株,単核白血球にmAChR受容体および神経型nAChRサブユニットが発現していることが確認された.しかし,骨格筋型nAChRサブユニットはいずれの細胞にも発現していなかった.さらに,細胞株あるいは各個人の単核白血球に発現しているmAChRサブタイプあるいは神経型nAChRサブユニットには相違が認められた. 2) 共焦点レーザー顕微鏡を用いた細胞内カルシウムイオン動態の解析:カルシウム感受性蛍光色素をT細胞系株CEMおよびB細胞系株Daudiに負荷した後,細胞をスライドグラス上に固定した.各AChRサブタイプに選択的な拮抗薬の存在下および非存在下に,mAChR作用薬Oxo-Mを作用させた.細胞内カルシウムイオン濃度の変化を,共焦点レーザー顕微鏡を用いて経時的かつ空間的に観察した.Oxo-Mにより細胞内遊離カルシウムイオン濃度は上昇した.この上昇作用は,M3サブタイプ選択的mAChR拮抗薬により選択的に拮抗された. 以上の結果より,1)リンパ球にはmAChRおよびnAChが発現していること,2)M3サブタイプを介する細胞内カルシウムシグナリング機構の存在が示唆された.
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