私が発現クローニング(Expression Cloning)の手法によりクローン化した血管内皮細胞に発現している新規スキャベンジャー受容体SREC(Scavenger Receptor Expressed by Endothel Cells)は、酸化変性したリポ蛋白質をリガンドとすることから動脈硬化の発症等の病態への寄与が示唆されている。この受容体の拮抗阻害剤であるポリイノシン酸が血管内皮細胞に作用し、接着分子ICAM-1やVCAM-1の発現を誘導すること、アセチル化LDLが血管内皮細胞のPDGF産生を抑制することなどから、この受容体を介した生物活性の重要性が示唆されているものの、その機構は不明であり本受容体の生理的リガンドの同定を試みている。本受容体は406アミノ酸から構成される細胞外ドメインを持ち、実に18%に相当するシステイン残基を含んでいる。また5箇所のEGF様ドメインを含み、これらのドメインを介してリガンドと相互作用していることが示唆される。 本年度はバキュロウィルスを用いて細胞外ドメインとヒトlgGFc部分との融合蛋白質を生産、精製を行い、リガンド結合能を有する融合蛋白質を得た。この融合蛋白質を用いて、Far-Western法や共沈法により、リガンド分子の同定を検討している。また受容体を発現させた浮遊細胞を用いたジャクスタクラインアッセイによ受容体リガンドを検索している。 今後、リガンド分子を単離し、血管内皮細胞を用いて本受容体を介した生物活性、例えば、接着分子の発現誘導や内皮細胞の増殖、遊走等の血管新生への影響等を検討することにより、動脈硬化の発症等の病態への寄与を明らかにする。また受容体リガンドのノックアウトマウスの作製によりリガンドの生理的役割の解明を行う予定である。
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