本年度は、抗P_0-C末端ペプチド抗体によって、脊髄に発現が認められた分子に関して、更に詳細な生化学的解析を行った。 これまでの結果から脊髄にP_0と相同性を持つ分子量30KDaのタンパク質が存在する可能性が考えられた。そこでNorthern blotting法を用い、P_0のN-末端部分(1-199)、及びアスパラギン結合型糖鎖を含む中央部分(265-466)の発現について検討を行った。その結果、若齢(9週齢)、老齢(30月齢)ともに、両部位のmRNAの発現が検出された。そのサイズも双方とも等しく、これまでに報吉されたP_0のmRNAのサイズと一致した。以上の結果から、週齢に関わらず脊髄中にも末梢神経と同様のアミノ酸配列を持つP_0分子が発現している可能性が強く示唆された。 一方、30月齢のみでP_0がレンチルレクチンによって検出されるのは、その糖鎖構造に違いがあるためであると考えられた。そこで様々な糖鎖構造特異的なレクチンを用いて解析を試みたところ、9週齢のP_0に反応性を示すレクチンは見つからなかった、この結果から9週齢のP_0には糖鎖が存在しない可能性が考えられた。そこで、P_0上の糖鎖の検出を試みたところ、30月齢のP_0には、糖鎖が検出されたが、9週齢では検出されなかった。このことから、若齢ラットではP_0分子上に糖鎖は存在しないが、老化と伴に糖鎖を持つ分子が出現する可能性が示唆された。 現在、脊髄膜画分中からのP_0の可溶化を試みている。これまでにTritonX-100による可溶化は不可能でSDSによる可溶化は容易であることを明らかにしている。次年度では、この性質を利用した選択的可溶化と、ゲル濾過やその他各種HPLCカラムクロマトグラフィーを組み合わせた方法により、脊髄中のP_0分子の単離精製を行い、加齢に伴う糖鎖の変化について解析を行う予定である。
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