研究概要 |
我々は新機能RNAリボザイムの合理的分子設計として、ハンマーヘッド型リボザイムのステムループII部分にフラビン結合部位を導入し、フラビン分子(FMN)によるリボザイム活性の発現制御に成功した。そこでこの発現制御機構について報告する。新規創製リボザイムの基質切断活性のみを評価するためにSingle tumover条件下で測定を行い、リボザイムの一次速度定数をFMN存在下、非存在下で各々k20bs,k2として算出した。その結果、k20bsの値がk2と比較して最大6倍もの値を示した。次に、基質切断活性のFMN濃度依存性を調べた結果、活性はFMN濃度の増加と共に上昇するが、次第に飽和していく現象がみられた。この飽和現象は、FMNが確実にそのアプタマーに結合していることを示しており、またこれより求まるKd値として適当な値が得られた。これと同時に、FMN-リボザイム複合体の速度定数であるk2'値が求まるが、この値はk2値と比較して10倍以上もの値を示したことから、FMNはリボザイムの切断段階に作用していることが示された。また、FMNによるキメラリボザイムの構造変化を確かめるために、特にステムII部分の塩基対形成の有無に注目して、FMN存在下、非存在下で構造的相違を鋭敏に検知する化学修飾法(ゲル電気泳動法)を用いて検討を行った。その結果、FMN存在下ではステムII部分の塩基対形成が認められ、非存在下では塩基対の形成が弱いことが確認された。したがってこのフラビンスイッチ型リボザイムは、フラビン分子の結合によりステムII部分の塩基対形成が誘導され、この構造変化が活性発現につながったものと考えられる。
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