本研究は、植物防御機構に関わる有用な二次代謝産物(フェニルプロパメイドやペンツオキサジノンなど)の生合成遺伝子群について、特に1)フェニルプロパノイド生合成経路、CHS(カルコン合成酵素)・DFR(ジヒドロフラボノール4-還元酵素)両遺伝子に注目し、2)ベンツオキサジノン生合成経路では、トリプトファン合成酵素α、チトクロームP-450依存性モノオキシゲナーゼなどの遺伝子群に注目して、それぞれの生合成に関わる酵素群の遺伝子構造や生化学的機能、遺伝子発現様式について解析することを主たる研究の目的とする。 本年度では、DFR-A、-B、-C、と3つタンデムに並ぶアサガオ及びマルバアサガオのアントシアニン生合成経路遺伝子DFRについて、両者それぞれの17kbにわたるDFR遺伝子領域の遺伝子構造解析を行ったところ、3つの遺伝子のいずれもが6つのエキソンより構成され、プロモーターやターミネーターと考えられる配列が存在した。このデータから進化系統樹を作成したところ、これらDFR遺伝子はアサガオとマルバアサガオの種分化が起る以前に非相同的組換えにより3コピーのDFR遺伝子がタンデムに並んだ構造となり、その後挿入や欠失を含む多様化を起ったことを示唆していた。次に、DFR-B遺伝子が、花弁や茎、葉でアントシアニン生合成に関わるDFR遺伝子と分かっていることから、DFR-A、およひDFR-C遺伝子の機能を探る第一歩として、我々はsemi-quantitative RT-PCRによりそれら遺伝子の発現について解析した。その結果、ごく微量ではあるがDFR-AやDFR-Cが、花やその他の組織においてもDFRmRNAを発現しているとの知見を得た。次年度では、マルバアサガオCHS遺伝子群(CHSA、CHSD、CHSE)について生化学的な解析(その遺伝子産生物についての基質特異性の検討)を行う。さらに、ベンツオキサジノン(DIBOA、DIMBOAなど)の生合成経路遺伝子群;トリプトファン合成酵素α、チトクロームP-450依存性モノオキシゲナーゼなどについてもその解析を行う。
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