まず、次の3点に関する調査を行った。 日本を含む各国の医療電子機器に関する電波防御の規制や指針 ・建築材料の電波透過性を測定するための規格および規格案 ・新規に運用が開始された低高度軌道を周回する通信衛星を用いた衛星携帯電話の規格 この調査結果をまとめたものは医療情報学誌に資料として掲載された。特に衛星携帯電話端末はこれまでの携帯電話端末に比べ非常に大きな出力を出す場合があることがわかり、医療機関に対して注意を喚起することができた。 次に、実際の病院建築における壁について携帯電話で使用されている周波数帯・出力の電波に対する電波透過性の測定実験を行い透過性を調べた。その結果、築後30年を経たコンクリート壁の電界遮蔽能力が2dBでありほとんど電波を遮蔽できないこと、厚さ0.5mmのスチール板を圧縮紙の両面に張ったパーティションが高い遮蔽能力を持つことがわかった。 また、屋内に置かれた金属製のキャビネットなどによって、室外から侵入した電磁波による電界強度の分布が大きく乱れ、予想以上の電界強度となる地点が生じることがわかった。 また、この測定を通して、挿入損失法がどの医療機関でも簡易に調べられる方法であることを確認した。 これらの結果はBIOMEDICAL INSTRUMENTATION&TECHNOLOGY誌にORIGINAL RESEARCHとして掲載された。 現在、安価かつ容易に設置可能な多数の建築部材について、広範囲な周波数の電波に対する電磁遮蔽能力を測定中であり、今後その結果を発表する予定である。
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