高コレステロール血症の大部分は多因子性のものであり、その感受性遺伝子は一部しか同定されていない。本年度は、多因子性高コレステロール血症と関連する多型性変異遺伝子を同定することを目的とした。人間ドックを受診した健康な成人389名(平均年齢49.6歳、男性72%)を対象として、高コレステロール血症の候補遺伝子であるApolipoprotein E(ApoE)遺伝子型、Apolipoprotein(a)(Apo(a))のkringle-4リピート数、Apolipoprotein B(ApoB)-516C/T多型の遺伝子型、Cholesterol7α-hydroxylase(CYP7)-278C/A多型の遺伝子型と血清コレステロール値との関連を分析した。回帰分析により、調べた4つの遺伝子のうちApoE遺伝子型、Apo(a)のkringle-4リピート数、ApoB-516C/T多型は、血清コレステロール値の決定に関与しており、この3つの遺伝子型で血清コレステロール値の個体差の約8%が説明できることが示唆された。日本人の約16%が保有するApoEε4対立遺伝子保有者における高コレステロール血症(TC≧240mg/dl)の頻度は、非保有者に較べて有意に増加していた(23.5% vs 9.5%、p=0.005)。また、日本人の約7%の個体が保有するkringle-4リピート数23以下の小さいサイズのApo(a)対立遺伝子保有者における高コレステロール血症の頻度は、非保有者に較べて有意に増加していた(29.6% vs 9.9%、p<0.002)。さらに日本人の約14%が保有するApoB-516T対立遺伝子保有者における高コレステロール血症の頻度は、非保有者に較べて有意に増加していた(24.2% vs 8.5%、p=0.007)。このことから、ApoEε4対立遺伝子、小さいサイズのApo(a)対立遺伝子およびApoB-516T対立遺伝子は、作用は弱いが比較的頻度の高い、高コレステロール血症感受性遺伝子であることが示唆された。
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