ヒト21番染色体q22.2ダウン症候群関連領域に座位するSIM2遺伝子の転写機構を明らかにするためプロモーター領域の解析を行った。ルシフェラーゼ発現ベクター(pGL3-Basic)に転写開始点を含むヒトSIM2遺伝子上流領域を組み込み、ヒトSIM2遺伝子を発現しているGlioblastoma細胞株にリポフェクション法を用いて導入し、ルシフェラーゼ活性を指標にプロモーター領域の同定を行った。翻訳開始点を+1として、5^1-RACE法にて決定された転写開始点は-1246であった。-2449〜-188までを含む領域内で11個の欠夫変異体を作製した。コントロールベクター(pRL一TK)でのルシフェラーゼ活性を100%とした時、-1385より下流を含むクローンは450%と高い活性が見られた。-1325から下流のみを含むクローンは平均230%と低くなっていて、弱いプロモーター活性が見られた。更に詳細にプロモーター領域の解析を行うため-1953〜-1027までを含む領域内で9個の欠失変異体を作製し、ルシフェラーゼ活性を測定した。-1390から下流を含むクローンの活性は260%、-1349から下流を含むクローンの活性は60%と低く、特に-1306から下流を含むクローンの活性は7%であった。この2つのシリーズ実験よりプロモーター活性が強い領域は-1385〜-1325、次に強い領域は-1027〜-188であった。-1385〜-1325の領域内にある転写因子結合部位をTFSEARCHにて検索したところ転写因子E2F、E47、C-Mybの3つの結合部位が予測された。-1027〜-188の領域には5^1-RACE法にて決定したマウスSim 2遺伝子の転写開始点が含まれることから、もう一つの転写開始点とプロモーター領域の存在が示唆された。今後、これらの部位を変異させてルシフェラーゼ活性を測定しcis-エレメントを同定し、Gel shift assayを用いてヒトSIM2遺伝子転写制御因子を単離する。
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