研究概要 |
アレルギー性鼻炎は血管透過性冗進および痒みを主体とした疾病であり,ヒスタミンが最も重要な化学伝達物質であると考えられている.しかし,臨床において抗ヒスタミン薬のみでは十分な治療効果が認められないことからヒスタミン以外の因子の関与が想定されている.一方,サブスタンスPは血管透過性冗進および痒みを誘発する最も強力な神経ペプチドであるが,鼻アレルギー症状における役割については未だ十分解明されていない.今回,ヒスタミンHl受容体欠損マウスを用いることにより鼻アレルギー症状発現におけるサブスタンスPの関与について検討した. 実験には,5-15週齢の雄性ヒスタミンH1受容体欠損マウスおよびその野性型マウスを用いた.マウスに種々な濃度のヒスタミンおよびサブスタンスP溶液を点鼻投与し,誘発されるくしゃみ反応および鼻掻き行動の回数を測定することにより鼻アレルギー症状の指標とした. ヒスタミンH1受容体欠損マウスでは,ヒスタミン溶液の点鼻投与によるくしゃみ反応および鼻掻き行動はほとんど観察されなかった.一方,ヒスタミンH1受容体欠損マウスにサブスタンスPを点鼻投与することにより,有意なくしゃみ反応および鼻掻き行動が誘発された. ヒスタミンH1受容体欠損マウスにサブスタンスPを点鼻投与することによりくしゃみ反応および鼻掻き行動が認められたことから,サブスタンスPはヒスタミンH1受容体を介さず鼻アレルギー症状を誘発させることが明らかとなった.今後,サブスタンスPを枯渇させる作用を有するカプサイシンを用いて,鼻アレルギー症状における内因性のサブスタンスPの役割についても検討する予定である.
|