研究概要 |
本年度の研究では、制癌剤のスクリーニングと来年度のin vivo抗腫瘍活性の評価に向けた治療システムの改善に関する基礎的検討を行った。 強力な抗腫瘍活性を持つ低分子抗癌剤の中から、それぞれ脂溶性の異なるcisplatin誘導体(p-PtB)、mitomycinC(MMC)、methotrexate(MIX)をモデル制癌剤として選択し、鼻腔内投与後のCSFへの移行性について、検討を行った。脂溶性の高いMMCでは鼻腔からCSFへの有意な移行は観察されなかったが、脂溶性の低いP-PtB,MTXでは静脈内投与時に比べて、点鼻投与後のCSF中濃度が有意に高く、鼻腔から直接CSFへ移行することが示唆された。したがって、本研究に用いる抗癌剤としては、脂溶性の低いものが適当であると考えられる。次に、P-PtB,MTXについて、その有効性を高めるために、高いCSF中濃度を長時間維持できるように、種々の製剤学的な工夫を試みた。その結果、P-PtBに関しては薬物の粉末投与が有効であった。また、MTXについては、高分子基剤を利用して、粘度を高めた投与液を投与すると同時に、利尿薬であり、CSFの分泌抑制作用を有するacetazolamideを併用することにより、血漿中濃度の低下とCSF中濃度の増大・持続化が可能で、主作用・副作用の両面で有効であることが明らかとなった。さらにMTXについては、9Lラットグリオーマ細胞に対するin vitro50%細胞増殖阻害濃度が顕著に低いうえに、鼻腔内投与後のCSF中濃度が高いことから、in vivo抗腫瘍活性の評価でその有効性の確認が期待される。
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