血小板膜上のGPIbを介する信号伝達系において、GPIbの細胞内ドメインに結合する信号伝達分子の同定を試みた。抗GPIb抗体での免疫沈降では、GPIbと共沈するチロシン燐酸化蛋白の変化は認めなかった。そこで、GPIbの免疫沈降物の in vitro kinaseアッセイを行い、キナーゼ活性の変化を判定した。von Willebrand因子(vWF)とGPIbの結合を抑制する抗GPIb抗体では GPIbに結合するキナーゼ活性は認められなかったが、GPIbとvWFの結合を抑制しないいわゆるnon-functionalの抗GPIb抗体を用いることにより、GPIbにキナーゼ活性が結合することを確認した。このキナーゼ活性はKOH処理に抵抗性であり、またphosphoamino acid analysisにより燐酸化されている蛋白はチロシン残基であることを見いだした。これらの結果より、GPIbとvWFの結合により、GPIbの細胞内ドメインにチロシンキナーゼが結合することが推測された。このチロシンキナーゼは 自己燐酸化を認めず、またSrc、Syk、Lyn等のこれまで血小板で報告のあるチロシンキナーゼとは異なる可能性が大きいと思われた。 このキナーゼ活性を同定するために、two hybrid systemを用いることを試みた。すなわち、GPIbの細胞内ドメインをコードするコンストラクトと、血小板、または巨核球細胞株より得られたcDNAライブラリーを組み込んだものをベクターに入れ、酵母のGal4を用いたtwo hybrid systemにより、直接GPIbの細胞内ドメインと結合する蛋白のcDNAを同定する方法である。これまでに血小板及び、巨核球細胞株のcDNAライブラリーの作成に成功しており、現在two hybridの検討を開始したところである。
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