研究概要 |
内因性モノアミンオキシダーゼ(MAO)活性阻害物質の生体内での役割を検討するためイサチン濃度測定法を開発し,パーキンソン病との関連性について検討し以下の結果を得た. 1. これまで尿中や血液中のイサチン濃度測定法は,GC-MSやHPLC法で行われてきた.しかし,測定するイサチン濃度が高濃度になると回収率が悪くなるため一定濃度を超えると正確な値が得られなかった.そこで新しいイサチン濃度測定法の開発をHPLCを用いて試みた.回収率,日内変動および日差変動ともに良好な値が得られ,以後のイサチン濃度測定に有効であることが証明された. 2. 健常人から1日4回尿を採取しイサチン濃度を測定すると,個人差はあるが日常の生活では一定の範囲内にとどまることが示された. 3. 健常人の尿中イサチン濃度と性および年齢との間には相関は見られなかった. 4. 尿中イサチン濃度と血漿イサチン濃度との間には有意な相関が見られた. 5. パーキンソン病患者の尿中イサチン濃度はHoehnとYahrの重症度分類のII度までは健常人と同程度の値を示したがIII度,IV度と重症度が増すにしたがって増加した.しかし,V度の群においては健常人のレベルまで低下する例が見られた.重症度II度の群において治療薬投与群は非治療群に比較して尿中イサチン濃度が低値をした. 以上の結果より,尿中イサチン濃度測定がパーキンソン病患者の重症度しいてはドパミン含量を維持するにも有効であることが示唆された.
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