研究概要 |
平成10年度に引き続きMRSA菌株の変異とゲノム型別結果について,検討を行った。 平成10年度の実験からは,尿および血清成分により培養を行った場合にゲノムの変化がみられることが確認された。また,平成10年度の実験からマウス尾静脈へのMRSA菌株の接種によりマウスの腎臓への定着の確認が行われたので,今年度は,MRSA菌株(臨床分離株)の株数を増やして実験を行った。具体的には,SPF ICRマウス尾静脈に,10^6CFU/マウスになるようにMRSA菌株の接種を行った。薬剤はCAZ(セフメタジジム)を用い,投与群と非投与群に分けて実験を行った。投与群については,CAZ(セフメタジジム)を1mg/mouse/dayを1日1回,実験開始とともに行い,7日間経口的に投与を行った。7日後腎臓を分離し,ホモジナイズを行い菌の回収を行った。回収した菌について,溶血性の違いを調べて変異が疑われた株について,ゲノム型別を行った。その結果,以下のことが示された。1,接種菌株によって腎臓への定着に差がみられた。(膿瘍の有無の違いおよび回収菌量の違い)2,薬剤投与群と非投与群の差によるゲノムDNAの変異の差は認められなかった。3,接種菌株によって回収された株に多いもので7バンド以上違うものもみられた(最多で16バンドの差がみられた)。4,回収された株のゲノムパターンに変化のないものもあった。以上のことからゲノムDNA型別における同一株と解釈されるバンドの差の数の範囲は接種(感染)した菌株によって異なることが示唆された。
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