研究概要 |
最新の質量分析(MS)法、等電点電気泳動法及び遺伝子解析法を組み合わせ、迅速・正確な実用的診断法を確立した。本システムを用い、学内外より依頼のあった異常ヘモグロビン(Hb)症疑いの16検体を分析した結果、異常ヘモグロビン9種11症例を同定した。 HbE(β26Glu->Lys)、HbSagami^*(β139Asn->Thr)、 HbJ-Lome(β59Lys->Asn)、HbHokusetsu^*(β52AsP->Gly)、 HbYoshizuka(β108Asn->ASP)、HbHamadan(β56Gly->Arg)、 HbLe Lamentin(α20His->Gln)、HbHoshida(β43Glu->Gln)、 HbMasuda(β114Leu->Met,β119G1y->Asp) その内、2種(*印)は新規変異であった。その一つHbSazamiは、日本人に特有のプロモーター領域のTATAボックスに変異(-31A->G)が存在するβサラセミア症が合併していることをDNA解析の手法を用いて証明した。 また、日常検査法としての簡便さと迅速性を追求するため、律速段階である酵素消化を従来法に代えて、ビーズに酵素を固定化させたボロスザイムを使用し、行程の短縮化を検討した。トリブシンの場合、酵素反応時間は20分で定量的に消化ペプチドが検出できた(通常12時間)。一方、V8プロテアーゼの場合、10分より、消化ペプチドが検出し得たが、再現性等を考慮して反応時間は2時間とした(従来は12時間)。 更に、自家製の逆相樹脂を充填したナノスプレーチップ(内径200mm)をオンラインでMSに連結すれば、微量のナンプルで変異部位の同定が可能であることを、実証した(HbHamadan:2例、HbMasuda:1例)。
|