本研究の課題は、てんかん患児の病気観・健康観の形成やQOLに対して大きい影響をもたらすと考えられる親の生活調整行為に着眼し、病児に対する親の生活調整行為の特徴とそれに関連する要因を分析しようとするものである。平成11年度は、主にてんかん児やてんかん児の親を対象として、それぞれの生活の実情やそれに対する思いについての把握を中心に行った。 てんかん児に対しては、東京都内で小中学生の児童・生徒(5名)と合宿して聞き取りを実施し、友達がいないこと、いじめにあっていること、学業に遅れがあることなどが主要な心配事であることが分かった。特に友人との関係においてストレスをもっていた。家に帰っても友達とうまく遊べず、家にいることが伺えた。そのためてんかん児にとっては親や兄弟といった家族が重要な理解者、支持者であることが明らかになった。一方、親については都内のセルフヘルプグループに参加している人(15名)を中心に養護学校でも聞き取りを実施し、学校生活に対する不満は発作のありなしにかかわらず、理解のある教官に出会えるかどうかによることによって左右されることが明らかになった。また発作の抑制状態が悪い児の場合には学校からの呼び出しが頻回にあるため、親自身もそれを見越した生活を設計していることが伺えた。病児に対する親の生活調整行為を明らかにするためには、親は全体として子どもを中心とした生活設計をしており、またそのことが社会的にも期待されているということを重視することが必要であると考えられた。次年度はこれらを踏まえて、児と親との直接の関係だけではなく、親自身の生活設計にも視野を広げた調査枠組みによる質問紙調査を実施する予定である。
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