東京都M保健所管内にある5000世帯の集合住宅を抱える地域をモデル地区とし、住民のニーズや集合住宅特有の問題、援助者側の問題意識等の実態について明らかにすることを目的とした。前年度の関係機関職員の調査、精神保健事例調査、健康と生活を考える学習会の参画・実施に加え、今年度は民生委員、自治会役員、保健所職員を対象にフォーカス・グループ・インタビュー調査を実施、以下の知見を得た。1.住民が理想とする地域イメージは「高齢者や障害者にもやさしく住みやすい地域」、2.地域の問題・課題は、(1)モデル地区の高齢化に伴う(単身)高齢者の健康上・生活上の問題の増加、(2)団地の建て替えによる地域コミュニケーション崩壊への不安がある。支援者側の問題・課題は、(1)サービスの対象に該当しない者への関わりが難しく、緊急事態になってからの対応になりやすい、(2)精神や痴呆など対応困難事例などは関係職種間での共有化に時間がかかる。3.課題への対策、(1)住民:コミュニケーションの維持と多様な社会資源を上手に活用できることが重要であり、自立した生活を送ることが出来るよう日頃から自分の健康に関心を持ち、維持して行くこと。近隣や友人とのコミュニケーションを維持すること。社会資源を確認し、いざという時に上手に利用できるようにすること。(2)保健所:適切なニーズ把握による地区のコーディネートが重要であり、地域の中での保健所の役割の確認、積極的に地区に出向き住民や関係機関など周囲と調整しながら効果的な役割分担ができるようコーディネートする、地域保健医療福祉情報の整理と発信、健康教育活動の推進。(3)関係機関:相談から支援へ迅速につながるシステムづくりが重要であり、方策として住民ニーズを的確に把握し関係者で共有する、社会福祉協議会による小地域福祉組織化事業の推進、連絡会などの話し合う場の設定が必要であると示唆された。
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