本研究の目的は、先行研究である「老人保健施設への入所に関わる老人の自己決定に関する研究」をもとに、様々な施設・病院・家庭間のリロケーションに伴う高齢者の自己決定プロセスを、入所時あるいは退院時の面接調査により、プロスペクティブに明らかにしていくことである。 昨年度は、老人保健施設の新入所者6名、退所が予定された者3名と、一般病院の整形外科と在宅支援病棟に入院中で退院が予定された者5名に対して、リロケーションに伴う自己決定に関する面接調査を行った。 本年度は、まず昨年度収集したデータを逐語録におこし、先行研究をもとに分析を行った。その結果、一般病院の退院が予定された高齢者は、自分で新しいベットを購入するよう依頼し退院の準備をすすめたり、あまり物事を考えずに、すすめられたことを受け入れ満足していたり、家族の状況等を考え、家族が決めたことに譲歩するという比較的健全な自己決定プロセスがみられた。しかし、あきらめたり我慢しながら家族の決定に従うものや、【決定不能】や【決定に関与させてもらえない】者はみられなかった。これらは、本研究における一般病院での対象が、他院に退院の1名を除きすべてが自宅退院であったことや身体が回復しつつある状況にあり、まだ可能性を期待できたという特徴があったためと考えられる。 また、老人保健施設の退所が予定された高齢者や、新入所の高齢者についても同様に分析を行った結果、先行研究の7つの自己決定プロセスは、病院からの退院、老人保健施設への入所・退所などのリロケーションに伴う自己決定プロセスにおいても活用できる可能性があると考えられた。しかし、特別養護老人ホームヘの入所や老人病院の退院におけるデータの分析を続け、さらに事例数を重ね、精錬されていく必要があると考える。
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