対象は、乳房温存療法をうけ退院後1年を経過した乳癌患者5名(女性.平均年齢50.8歳.全員が既婚。4名が子供あり。全員がStage l。全員がQuadrantectomy+60Gry放射線照射+タモキシフェン服用。1名が抗癌剤内服)。乳癌への罹患・治療体験の側面では、乳癌への罹患、癌再発の可能性、術式の自己決定、放射線治療のための毎日の通院、ホルモン剤としてのタモキフィフェンの服用、抗癌剤の服用が苦悩を引き起こしていた。身体機能・生活の側面では、上肢運動障害の可能性、上肢運動障害、患側上肢・乳房・腋窩における不快感、患肢の運動に伴う不快感、患肢の浮腫、日常生活の制約、放射線照射部位の痛みや痒み、身体不調、患側上肢の怪我、月経停止と再開が苦悩を引き起こしていた。外見の側面では、乳房の変形の可能性、乳房や腋窩に生じた術創、放射線照射部位のただれや皮膚変色、マーキングラインが苦悩をしていた.乳房の変形は、膨らみが残り術前よりむしろ格好良くなったという安寧を引き起こすと同時に、乳房が変形してしまったことには変わりがないという喪失感を引き起こしていた。夫婦関係の側面では、夫の動揺が苦悩を引き起こしていた.夫婦での術式選択の検討、夫の家事への協力、夫からの精神的支持は、安寧を引き起こすと同時に、隠し事をしているのではないかという苦悩を引き起こしていた。親子関係の側面では、子供の動揺、娘の存在が苦悩を引き起こしていた.子供の家事への協力、子供からの精神的支持は、安寧を引き起こすと同時に、隠し事をしているのではないかという苦悩を引き起こしていた。社会活動・対人関係の側面では、他者へ乳癌罹患がばれる可能性、健常者の同情的反応が苦悩を引き起こしていた。健常者の受容的反応は安寧を引き起こしていた。同病者とのつきあいは、安寧と同時に、新しい人間関係による苦悩を引き起こしていた。
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