昨年度の調査では、質問紙調査法により、神経内科を退院した患者とその家族は、退院後の概ね1ヶ月後の時点で、疾患に関する不安、治療や医療処置についての疑問など多様な困難を経験していることが明らかになった。これらの退院後の困難に対し、看護職による退院指導は、患者の日常生活に付いての指導、服薬及び医療処置に関する者が多く実施されていた。患者・家族の困難に対し、看護職が患者・家族の退院後の困難を予測して退院前の指導を行ない、その結果困難の発生が最小限に押さえられている様子が伺われた。一方、看護職が的確な予測・介入が出来ていない側面も明らかになった。 昨年度に実施した質問紙調査の知見をもとに、今年度の調査では、神経内科患者・家族の抱える困難と、それらの困難に対して患者・家族がどのように対処しているかを検討するためにインタビューを実施した。その結果、患者・家族の疾患認識は第1段階「症状を感じる」から第7段階「意志的楽観」へ変化してゆく様子が伺われ、各認識段階において患者・家族はさまざまな対処法を取っていた。対処法は「肯定的な側面に注目する」「変えられないものをあきらめる」「あるものから代替を探す」などのタイプにまとめられ、それらの対処を通じて患者・家族は「悩まない自己(あるいは家族としての患者)」に代表される「新たな自己(あるいは家族としての患者)の創造」を行っているものと思われた。疾患認識の変化には、疾患の進行速度による違いが大きく影響することが示唆され、また患者によるこのような認識と対処の変化プロセスには家族条件による多様性も見られるように思われた。本研究の結果から、看護職が患者・家族の置かれた状況をより良く理解し、より効果的な支援を実施できるようになることが望まれる。
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