C型肝炎は、治療過程で感染・発症した者が多く、日常生活の行動変容のみではコントロールしきれないことが多く、長期間のうちに発癌に至る場合も多い特殊な慢性疾患であるが、患者の長期的な経過に注目した実態は明らかにされていない。そこで今回は、C型肝炎由来の肝癌患者の発症から現在に至る心理的特徴および療養行動を記述的に明らかにするために、カテゴリー化し、さらに抽出されたカテゴリー間の関係を構造化し、概念仮設モデルを導き出すことを目的とした。対象は、HCV抗体プラスであることを告げられている者の内、肝癌で治療を受けている入院患者であり、事前に研究主旨、方法、所要時間を説明し、同意を得た。面接の進め方は、疾患・治療についての経時的な思い、日常生活の変化(療養行動)、医療従事者との関係、気にかかっていることの4項目を中心にしながら、本人が自由に表現しやすいように、研究者は傾聴する態度で接した。面接時間は、対象1名につき約1時間であった。今年度は、面接内容は逐語録にして、事例毎の共通や差異、背景との関連などについて検討した。その結果、事例毎の共通として、疾患に対する関心は高く、知識は主に本から得ていた。発症は仕方がないと受け止め、肝癌発症を予防する唯一の方法という思いから医師を信頼し、定期受診・服薬行動を継続し、肝機能データの悪化に注目する傾向がみられた。肝癌に対しては、早期発見・治療により治療可能と捉え、病気を持ちながら充実した生活を送ろうと考えていた。違異は、飲酒など生活の中に原因を見い出せる場合は後悔する傾向、再発を経験した者は自分の予測よりも肝癌を恐ろしい病気と捉える傾向がみられた。 平成11年度は、今年度と同様の面接および分析を継続し、カテゴリーの抽出、およびカテゴリー間の関係を構造化し、概念仮設モデルを導き出し記述していく予定で進めている。
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