研究概要 |
一定強度の運動において,負荷が換気性作業閾値(あるいは無酸素性作業閾値)よりも高い強度の運動では,運動開始3分以降も酸素摂取量(VO_2)は漸増し続けるために定常値が得られず,この漸増をVO_2 slow componentとよぶ.このVO_2 slow componentは,活動筋での速筋線維の漸増的動員/発火頻度の結果,活動筋での酸素利用が漸増していくためではないか,という仮説を立て,この仮説を検証することを目的とした.平成10年度は,片脚自転車運動および両脚交互膝伸展運動を用いて,多段階負荷試験および一定負荷運動中の酸素摂取量(呼気ガス分析),大腿四頭筋の筋活動(筋音図と表面筋電図),大腿四頭筋の局所酸素利用動態(近赤外分光法)の関係を分析した.自転車運動においてはVO_2,slow componentと筋活動には対応関係が得られたが,局所酸素利用動態にはばらつきが大きく,一定の傾向が見出せなかった.膝伸展運動においては,VO_2slow component,筋活動,局所酸素利用動態に対応関係が得られ,活動筋の筋活動増加,局所酸素利用の漸増,酸素摂取量の漸増が互いに密接に関係していることが強く示唆された.平成11年度は,持久的なトレーニングの実施によってVO_2 slow componentを減少させ,その際の筋活動および局所酸素利用動態を経時的に分析することにより,これらの変化の関係についてさらに詳しく調べ,VO_2,slow componentの機序の解明に取り組む.
|