平成10年度は、1.関節インピーダンスと筋活動との関係、2.関節インピーダンスと伸張反射機構との関係、3.関節インピーダンスとH反射との関係について検討した。 1. 主働筋のみの収縮時には、筋活動が増加すると関節まわりのスティフネスおよび粘性は共に増大した。次に、主働筋と拮抗筋との共収縮課題を被験者に行わせたところ、スティフネスは主働筋のみの収縮時よりも増大する傾向にあった。粘性もスティフネスとほぼ同じ傾向が認められたが、被験者間での違いが大きかった。慣性モーメントは、筋収縮レベルとは無関係に一定であった。 2. スティフネスと伸張反射との関係については、主働筋のみを収縮させた場合には両者の間に正の相関関係が認められた。粘性の場合も同様であった。しかし、拮抗筋が共収縮すると、スティフネスは増大するものの、伸張反射系の興奮性は逆に減少する傾向にあった。また、拮抗筋共収縮時における粘性と伸張反射との関係は、被験者間で傾向にばらつきが見られた。慣性モーメントと伸張反射との関係は無相関であった。 3. 関節インピーダンスとH反射との関係については、主働筋のみの収縮時にはスティフネス・粘性ともに増大し、H反射の振幅値も大きくなった。逆に拮抗筋のみの収縮時にはH反射の振幅値は減少する傾向が認められた。 従来、スティフネス調節に果たす伸張反射系の役割は非常に重要な位置を占めていると考えられてきた。しかし本研究の結果から、拮抗筋が共収縮すると、スティフネスは増大するが、伸張反射系の興奮性は逆に減少することが示された。すなわち、伸張反射系のスティフネス調節に果たす役割は、目的とする運動により異なった様相を示すものと考えられる。
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