本研究の目的は、平成7年度から平成9年度までに総合型地域スポーツクラブ育成モデル事業として指定を受けた16市町全ての地域とクラブ組織に着目し、モデル事業終了後にクラブ組織がどの様に自立し、地域に根づいていくかを、モデル事業が終了する3年目とモデル事業が終了した翌年の2年間にわたる継続調査によって得られた縦断的なデータを分析することにより、地域におけるスポーツ振興策として打ち出されたこのモデル事業の成果を検討するための基礎的資料を得ることにある。本研究のデータ収集は、平成7年度から平成9年度までにモデル事業に指定された全国16市町のクラブ運営の現状を把握するために、各地域において補助事業を担当する教育委員会部局の行政職員ならびにクラブ運営に携わる担当者に対してインタビュー調査を行った。その結果、次のようなことが明らかになった。すなわち、モデル事業の指定を受けている18市町において、クラブ運営の共通課題はそのほとんどが財源確保であった。既にクラブをクラブ会員、すなわち地域住民による自主運営化を進めている地域はあるものの、既存のクラブ組織やクラブ育成事業などによって、クラブの基盤づくりができていない組織は、会員のクラブ運営に対するノウハウや自立意識の欠落、また組織の形骸化、さらには組織のビジョンが明確になっていないことにより、クラブの自主運営化を進めることが困難な状況にあった。その背景には、このモデル事業によって、地域のスポーツ振興の核となる基盤づくりや組織化を進めることよりもむしろ、単一の地域では得ることのできない補助金の獲得が第一義的になり、モデル事業終了後の地域スポーツ振興のビジョンが欠落したり、身の丈にあったクラブ運営ができなかったことなどが問題点としてあげられる。また地域にある既存スポーツ団体との軋轢などが、総合型のクラブづくりを阻害していることも明らかになった。
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