研究概要 |
平成10・11年度の2年間にわたり、以下の研究課題を検討・解明する予定である。1)発育期・老齢期のラット下肢骨格筋におけるストレス蛋白質の発現変化の検討。2)活動量の増加・減少によるラット下肢骨格筋のストレス蛋白質の発現変化の検討。3)神経毒投与によるラット骨格筋ストレス蛋白質の分布変化の検討。4)ヒト骨格筋におけるストレス蛋白質の分布の検討。 本年度(平成10年度)は、Wistar系雄ラットを用いて、活動量の増加あるいは減少による下肢骨格筋のストレス蛋白質の発現変化について検討した。骨格筋の活動量の増加モデルとして、下肢の骨格筋のm.gastrocnemiusをアキレス腱から1cm程度取り除くことにより、残された共働筋のm.plantarisとm.soleusの加重負荷を増加させる方法を用いた。一方、活動量の減少モデルとしては、後肢懸垂法、後肢懸垂+除神経、後肢懸垂+腱切除、後肢懸垂+除神経+腱切除、の各方法を用い、不活動のレベルに応じたストレス蛋白質の発現変化を検討した。 活動量の増加により代償的に肥大がみられたm.plantarisとm.soleusでは、コントロール群の値(100%)と比較して、ストレス蛋白質であるHSP72の発現がそれぞれ125%、135%と増加傾向を示した。一方、活動量の減少により萎縮がみられたm.plantarisとm.soleusでは、HSP72の発現が有意に減少した。特に、最も萎縮の著しい不活動モデル(後肢懸垂+除神経+腱切除)のm,plantarisとm.soleusにおいて、HSP72の発現量は最も低い値であった。 以上の結果から、骨格筋の活動量が増加することによって、ストレス蛋白質であるHSP72の発現は増加し、逆に活動量が減少することによってHSP72の発現は減少することが明らかになった。このことは、HSP72の発現が、骨格筋の活動量と密接に関連していることを示咳するものである。
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