本研究の目的は、スポーツ競技場面における様々な情報に対する各個人の志向性(情報志向性)の様相、及び、その情報志向性がスポーツ経験・行動とどのように関係しているのかを明らかにすることである。2年計画の1年目である今年度(平成10年度)は、情報志向性の概念規定を行うとともに、どのような情報志向スタイルが存在しているのかを調査し、情報志向性測定尺度の作成を試みた。 概念規定においては、関連先行研究の概観、及び、各種認知スタイル、注意スタイル、志向性、パーソナリティとの関係の検討を通して、情報志向性の概念を明確化した。続いて、実際にどのような情報志向スタイルが存在しているのかを明らかにするために、180人のスポーツ選手に対して質問紙を実施し、スポーツの試合前あるいは試合中に注意を引き付けられる物事や出来事を、思いつくまま自由に記述させた。また、これとは別に、15人のスポーツ選手に対し、直接面接を行って、具体的な情報収集行動のあり方の詳細を聞き出した。これらのデータの分析より、志向される情報は、内的なもの(自分に関するもの)と外的なもの(自分以外に関するもの)、人に関するものと物に関するもの、有形のものと無形のもの、などに分類されうることが示唆された。そして、以上のような分析結果を踏まえて、情報志向性尺度の試作版を作成した。2年目の平成11年度には、情報志向性尺度を完成させ、情報志向スタイルがどのようなスポーツ経験によって確立してきたのか、また、どのようなスポーツ行動を生起させるのかについての検討を行う予定である。
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