研究概要 |
電気的に発生させた表面電荷による固体表面の濡れ特性の制御という従来とはまったく異なった新しい制御法を提唱する。荷電状態の違いによる濡れ特性の変化の測定は,固体表面を固定したままでの測定が可能で,電位差を作るために必要な固体および液体をまわりから絶縁することも容易にできる液適法によって行う。 本年度は,まず,研究に必要な高精度な測定と動的な濡れ挙動の解析に必要な実時間測定とを可能にするため,コンピューター制御による画像処理式液滴法接触角計を構築した。つぎに,液滴法の配置における接触角の測定条件の決定を行った。その結果,液滴と固体表面との界面へ気体が吸着すると,固液界面張力が重力によって大きくなることが判明した。そして,粗面で気相の吸着が起きる条件では,この固液界面張力の重力依存性を通して,これまで重力に依存しないとされてきた液滴の示す見かけの接触角が重力によって大きくなることが分かった。液滴法の一般的な条件下における接触角の重力依存性を計算したところ,実験で十分に観測できるほど大きな依存性があった。これまで,接触角を測定する際,液体の蒸発や固体表面の不均一性など解析を難しくする原因を取り除くため,ある程度大きい液滴を使うことが好ましいとされていた。しかし,気相の吸着が起きる条件では,あまり大きくすると,重力を考慮する必要が出てくることがわかった。 次年度以降は,今年度の研究結果をもとに,濡れ特性の表面電荷依存性を調べ,その機構を考察する。そして,表面電荷によってどの程度,濡れ特性が制御できるかを明らかにする。さらにその成果を洗浄の効率化や窓ガラスの結露の予防へ応用することを目標とする。
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