1. 脂肪を味覚受容する可能性に関する研究 本研究では、行動・神経・細胞レベルで様々な脂肪に対する応答を測定することにより脂肪が味覚受容される可能性について検討し、さらに脂肪の味覚受容機構を解明することを目的としている。しかし、脂肪を摂取する際には味覚、嗅覚、物性、代謝後の影響のいずれもが作用しており、行動レベルにおいてはこれまではそれらの総合的な評価しか得ることができなかった。そこで本研究では、まずラットが味覚で得た情報のみに基づいて脂肪を選択する系を確立し、さらにその系を用いて脂肪が味覚受容されるか検討を行った。 (1) 味覚情報の評価系の確立 味覚情報を評価するためには嗅覚、物性、代謝後の影響を排除した系を確立することが必要である。そこで、脂肪を懸濁する溶媒に増粘多糖類であるキサンタンガムを用いることで物性による影響を排除し、摂取時間を5分間にすることで代謝後の影響を排除し、硫酸亜鉛溶液を鼻腔に流して嗅粘膜を剥離させることで嗅覚による影響を排除した。一般に行われる二瓶選択実験を基に上記の方法を併せ、またラットが5分間で試料を摂取するための訓練、嗅覚が確実に喪失していることを評価するために特定の臭いに対して忌避するための条件付けも併せて行うことにより、味覚情報の評価系を確立した。 (2) オレイン酸に対する選択性 上記の評価系を用いて食品に含まれる代表的な脂肪酸であるオレイン酸に対する選択性を調べた。ラットは0.2%以下の濃度のオレイン酸を選択しなかったが、0.5%以上の濃度のオレイン酸を選択した。この結果は、脂肪は味覚受容されることを強く示唆するものである。
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