我が国では国民栄養調査が行われているが、その値は食品成分表を用いたものであり調理による変化は考慮されていない。本研究は動物性食品を中心に、現実の調理における脂質量の変化を解明することを目的とし、各脂質成分量を分析している。今年度は、市販の薄切り豚ロース肉を試料としてそのまま用い、「ゆで」「焼き」「炒め」「揚げ」を調理方法とした。各調理操作は1ロットを調理前4枚、調理後4枚とし、1枚ごとに均質化後、Bligh and Dyer法で脂質を抽出した。メチル化を行い、ガスクロマトグラフィーで脂肪酸量を測定した。「炒め」「揚げ」では、豚肉脂質の溶出とサラダ油の付着による脂質の置換を、オレイン酸の組成変化から算出した。 いずれの調理操作によっても重量減少が認められたが、調理前の脂肪酸量は影響しなかった。脂肪酸組成は「ゆで」「焼き」では変化せず、「炒め」「揚げ」ではサラダ油の付着によって変化した。また、いずれの調理操作においても調理後の脂肪酸量は、調理前の脂肪酸量に影響され、脂肪酸含量が多いほど、増加量の減少または減少量の増加が大きくなった。これは、調理前の脂肪酸量の増加につれて豚肉由来の脂肪酸溶出量が増加することによるものであった。さらに、「炒め」ではサラダ油の付着量が豚肉の脂肪酸量にかかわらず一定であったが、「揚げ」では調理前の脂肪酸量の増加につれて、サラダ油の付着量も増加するという興味深い結果を示した。これらのことから、脂肪酸量の実測値と成分表を用いた計算値は異なっていた。現在、抽出した脂質について、ケン化、及び、トリメチルシリル化を行い、コレステロール量を測定、脂肪酸量の変化との関連について解析しており、総不ケン化物量についても分析を行っている。さらに、いかを試料として用いて、脂肪酸量、コレステロール量の測定も行っているところである。
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