研究概要 |
遺跡出土の微小骨片においても動物種の同定を可能にするためには、実際に縄文時代以来の遺跡から出土する哺乳動物とヒトの全身に渡る主要な骨において光学顕微鏡像を作製し、それをコンピュータによる画像処理システムにデーターベース化することが必要である。本年度はヒトおよび日本列島に生息する大・中哺乳動物、主にシカ、クマ、イノシシ、カモシカの性別の判明している様々の年齢段階における部位毎の基準標本を作製することに主眼を置いた。ヒトについては東北大学医学部解剖実習用遺体から頭頂骨中央部、鎖骨、上腕骨、尺骨、橈骨、大腿骨、脛骨、腓骨の骨幹中央部を1cm角の大きさで採取した。一方、動物標本に関しては、野生のシカの骨格標本を得るために東京大学総合研究博物館の高槻成紀氏の研究グループの宮城県金華山シカの生態調査に参加し、死亡年齢、死亡季節の判明している野生のシカ骨格を収集した。その他、宮城県角田市のイノシシ牧場、岩手県藤沢町鹿牧場、北海道壮瞥町えぞ鹿牧場、北海道登別市のクマ牧場、さらに北海道、宮城県、栃木県の猟友会所属のハンターに依頼して、死亡した動物を研究用として譲り受け,骨格標本を作製した。ヒトと同様に部位毎に1cm角の大きさで採取した。これらの資料を脱水処理後、樹脂包埋し、硬組織切断機を用いて骨組織切片を作製した。現在までのところ光学顕微鏡像の検討によれば、種レベルでは微小骨片による同定が可能と思われる。来年度、画像処理システムを採り入れ、定量分析により客観的な評価を行う。
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