研究概要 |
本研究は,自然科学的年代たる^<14>C年代と,実際の暦年代,ならびに歴史学的年代との間にある誤差(ズレ)を明らかにすることを目的とする.本年度は, ^<14>C年代と実際の暦年代との誤差を明らかにすべく,暦年代の既知である年輪試料の^<14>C年代測定を行った.伐採年代既知の木曽ヒノキ(樹齢950年)の年輪を一年単位に分割し,各試料からセルロースを調製した.その^<14>C年代を,名古屋大学タンデトロン加速器質量分析計1号機を用いて測定した.また,気体用質量分析計によって^<13>C濃度を測定し,同位体効果に対する補正を行った. ^<14>C年代を暦年代に換算する際に,現在最も広く利用されている較正曲線は,アメリカ・アイルランド産樹木を20年輪毎に分割した試料の^<14>C年代測定の実績から作成されたものである.そのため,古文書をはじめとする日本産・単年生試料の^<14>C年代較正にこの較正曲線を適用することへの有効性を吟味する必要があった,そこで,日本産樹木たる木曽ヒノキについて得られた本研究の結果をこの既存較正曲線の値と比較したところ,そのズレの平均値から,両者は測定誤差の範囲で一致しており,系統的な誤差(ズレ)は認められないことが示された.従って,既存の較正曲線を,日本産・単年生試料の^<14>C年代較正に適用することの有効性が示唆されている.ただし,1650年以降の年輪は,既存曲線から1%以上のズレを示すものもあり,短期間の変動については,さらに高精度での測定結果から吟味を行う必要性がある.そこで来年度は,より高精度の年代測定が可能であるタンデトロン2号機の本格稼働が開始するため,同測定器を用い年輪試料の測定を実施する.その一方で,歴史学的に年代の判明している古文書資料についても^<14>C年代測定を行い,年輪試料の結果とあわせて,^<14>C年代・暦年代・歴史学的年代の関係を明らかにする.
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