本研究では、まず、意思決定学習に効果的なメディアと相互学習の役割特性を以下のように明らかにした。意思決定学習に利用できるメディアの役割特性には、(1)必要な知識や考え方を提示・教授する役割、(2)意思決定など内的活動の過程や結果を外化する役割、(3)学習者へゆさぶりをかける役割がある。意思決定学習に効果がある相互学習の特性には、(1)互いに持つ知識の相互補完作用、(2)学習者同士の相互チェック機能、(3)メタ認知的スキルの向上がある。 次に、こうした役割特性を効果的に兼ね備えることのできるメディアとして、ハイパーカードが最適切であると判断し、教材化を試みた。またこのハイパーカード教材を用いる意思決定学習単元を開発した。開発した単元は、自由に商品を選択する第1次と教材を用いて商品を吟味する第2次からなる2次構成である。第1次では、まず「自分の家に適した商品を選ぼう」という課題を与え、その商品を選ぶための情報収集から行わせ、情報を収集・整理させた後、最も適すると思われる商品を一つ決定させる。第2次では、第1次での決定結果を用いて、ハイパーカード教材を活用しながら商品選択に見直しの必要性があるかどうかを検討させながら、意思決定に必要な知識や考え方を学習できるようにした。なお、単元の実施にあたっては、意思決定学習において学習者同士の相互作用が効果的であるとの知見に基づき、2人以上での学習形態を基本とした。 開発した意思決定学習単元におけるメディアの活用や学習者同士の相互作用について実証的に検討するため、兵庫教育大学附属中学校1年120名に対して実際に学習を行い、評価のためのデータ収集を行った。評価データを収集するため、1ペアにつき一台の学習過程情報収集装置を設置し、ハイパーカード教材での学習履歴ならびに学習者の発話及び学習の様子を記録した。また学習後に、教材の使用感等を学習者に評価してもらった。
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