本研究では、学習過程においてメディア活用と学習者同士の相互作用を同時に作用させることにより学習をより拡大深化させられるであろうとの仮説に基づき、商品の購入選択に関する意思決定学習を題材とした学習システムを実証的に検討することを目的とした。 この学習システムの開発にあたって、まず認知心理学分野における先行研究を分析し、意思決定学習に効果的なメディアと相互学習の役割特性を以下のように明らかにした。意思決定学習に利用できるメディアの役割特性は、(1)必要な知識や考え方を提示・教授する役割、(2)意思決定など内的活動の過程や結果を外化する役割、(3)学習者へゆさぶりをかける役割。意志決定学習に効果がある相互学習の特性は、(1)互いに持つ知識の相互補完作用、(2)学習者同士の相互チェック機能、(3)メタ認知的スキルの向上であった。 以上を踏まえた学習方法の効果を検討するため、中学校1年技術・家庭科における商品の購入選択に関する意思決定学習を開発し、実践を通して評価をおこなった。学習の事前事後に実施した質問紙調査および学習中の発話記録、学習プリント、ハイパーカード教材への入力履歴を分析することから、(1)基本的な視点を持たせるにはハイパーカード教材が有効であること、(2)相互学習時には学習者が相互に影響を与えあって視点を広げていること、(3)商品の妥当な評価や決定の見直しにはハイパーカード教材が有効であること、(4)商品の妥当な評価にはハイパーカードなどのインターフェイスが使いやすいなど外的な条件が整備されていることと学習者自身の意欲や態度等に問題がないことが必要であるが、後者がより重要である、という4点が明らかになった。
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