研究概要 |
1.マルチメディアによってもたらされる芸術の変容について、その表現形式の問題として情報の統合ということを焦点化し、歴史的なバウハウス運動の理念的成果としての様々な統合論と比較考察を行った。特に、マルチメディアによる作品において顕著となっている美術と音楽との統合については、バウハウスの重要な理念の一つである「諸芸術の統合」として認識できた。さらにバウハウスの歴史上での美術と音楽の密接な関係についても再考した。また、もう一つの重要な理念である「芸術と技術の統合」については、マルチメディア作品のあり方自体を示しているものであり、今日の新しい「バウハウス」として教育・研究機関が誕生してきていることと関連づけた。そのような新しい状況のなかで、マルチメディアによる表現の教育的な可能性を探ることの重要性を確認した。 2.美術におけるメディアリテラシー教育の重要性を指摘するとともに、マルチメディアによる表現を教材化する基礎としての実践研究を行った。まず、メディア批判の能力を育成するためのメディアリテラシーを土台にしながらも、美術において「メディアの特性を理解して自分の意図を効果的に表現できる総合的な能力の獲得」を位置づけた。さらに、マルチメディアによる表現によってもたらされる新たな課題として、「時間軸と運動を包含する動画(アニメーション)」、「映像と音声の同期」、「インタラクティブな作品のあり方」、「仮想現実(ヴァーチャル・リアリティ)の問題」を想定して、教育養成課程での教育実践に取り入れた。そこでは,動きのあるCGアニメーション制作、「自然との関わり」を考慮した制作プロセスの提案、プロモーション・ビデオ制作、コマーシャル制作などの実践成果を得た。
|