本年度の計画とそれに対する研究実績は以下の通りである。 1. これまでの研究結果を整理し、比例の指導下における比例的推論の変容に関する仮説を再度確認する。=> 指導の中で教えられるフォーマルな方法に対する児童の意味づけや使い方を視点とする特徴づけを、これまでの研究結果を見直す中で再度確認した。その際、フォーマルな方法の使い方が、3つの側面(「初期的」「適用基準の発達」「目的志向的」)を通して変容していくこと、特に「目的志向的」の側面で比例的推論の発達がみえることを確認した。同時に、指導下での学習や思考の変化に焦点を当てた先行研究の整理を行った。「反省的抽象化」「Reification」「反省的ディスコース」などの理論的構成物と本研究の視点との関連については、今後更に調べていく必要がある。 2. 長期にわたる観察と分析を円滑に行うために、データ収集および分析のシステム作りを行う。また、奈良県の小学校1学級において予備調査を行う。=> 11〜12月にかけて、奈良市の小学校で、4年生1学級を対象とした予備調査を行った。システム作りのために考案した点は、(1)大学院生1名と協同で行うことで、データ収集の能率化・正確化を、データ分析の客観化を図る、(2)個々の児童の学習プロセスを捉えるために学習プリントを使用する、である。(1)(2)ともに効果的であった。しかし、(2)は児童によってはこちらの見たい情報が得られにくいという限界もあった。その一方で、学習プリントの中に教師の数学指導観が見えたり、それに我々が影響を与えうる可能性がみられた。今後は、デニタ収集の効率化を更に工夫するとともに、教師にも研究のメンバーとして参加してもらう方向性を模索していきたい。
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